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諸国漫遊記
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 6月10日にNY、MSGで行われたWBO世界Jr、ウェルター級タイトルマッチ、ミゲール・コット対ポーリー・マリナジの試合は3−0(115−112,116−111,116−111)の判定でコットがマリナジを下し、6度目の防衛に成功した。
 世界初挑戦のマリナジは初回の左目上のカットと2Rのダウンにより始まった厳しい序盤から、中盤、彼の(最大にして唯一の)武器であるジャブを強引な攻めで打ち疲れの見えるコットに的確にヒットさせポイントを追い上げた。しかし終盤、コットは再びプレッシャーを強めその間にマリナジの顎を砕き、顔面を血に染めさせ最後まで攻め立てた。
 試合全体の印象は判定のポイント以上の開きが二人にはあるように思えた。彼のスタイルであるアウトボクシングが王者に通用していた時間は、王者のスタミナ回復に当てられた僅かなラウンドのみであったからだ。常に試合をコントロールしていたのはコットであり、されていたのがマリナジであった。


 この試合、マリナジのボクシング全てが世界の壁に阻まれたようにも思えた。それは彼の優れた部分であるジャブ、ハンドスピードそしてディフェンス以上に彼の劣っている部分がはっきりと現れてしまったからだ。
 彼の戦績、21戦21勝5KOが物語るように、ポーリー・マリナジには相手を倒しきる武器が皆無であった、それを”非力さ”、と言ってしまってもよかったかもしれない、、

 先日、NJ、アトランティック・シティで行われた、カルロス・バルドミール対アルツロ・ガッティの試合会場でマリナジの姿を見た。コットとの試合で腫れ上がっていた頬も順調に回復しているようで外傷はそれほどのものではなかった。
 多くの観客達が彼に写真やサインを求め、前回の試合のことを語った、彼もそれに笑顔で答えていた。そう、確かにあの日、マリナジが皆に見せたものは決して至らなかったものだけではなかった、彼はその非力さと共に、常に疑問視されていたハートの強さは少なくとも証明したからだ。頬の腫れと、止まらぬ流血の中でも彼は最後まで試合を捨てることはなかった。
 もしもそれはボクサーにとって最も重要なものと呼べるのであれば、彼にはそれがあった、ということなのかもしれない。
 群がるファン達の間を縫って、マリナジにいくつかの質問をした。
 「トレーニングはいつからまた再開するんだい?顔のケガの方も悪くはないようだね。」
 「多分来月からトレーニングは始めると思う。試合?試合はまだ予定はしてないよ。
ケガもまだ治りきってないからね。」
 「試合のこと、少し聞いてもいいかな?世界戦はどんなプランを立ててたんだい?」

 「いつも通り距離を作って、コットのペースにはさせないつもりだったんだ。だけど、当日リングを見ると、自分が考えていたよりもリングがずっと小さかったんだ。それで、急遽プランを変えて、インサイドでは相手を掴み、離れ際でパンチを狙うことにしたんだ。」
 「序盤は固く見えたけど、、」
 「別に固かった訳ではないんだ。ただ、最初のラウンドでまぶたを切っちゃって、少し混乱してしまった。今までにそんな経験はなかったからね。」
 そんなやり取りを数分していた時に、ふと彼の昔の試合後のインタビューのことを思い出していた。



 私が初めて見たアメリカでのプロボクシングの試合のメインがポーリー・マリナジだった。彼のことはグリーソンズでもよく見かけ、目が合えば必ず声をかけてくる、気さくで人当たりの良い好青年といった感の男だった。
 2003年位だったと思う。ブロンクスにある天井のそれほど高くはない、リングから飛べば手が照明に届いてしまいそうなナイトクラブで、マリナジはアンダードックのメキシカンと試合をしていた。
 マリナジは恐ろしく速いハンドスピードで相手の頭を何度も跳ね上げていた。しかしラウンドが進むにつれ相手の粘りのみの攻めに手こずり始めていた。回転の速い連打をマリナジが叩き込んでも相手は構わず前進してきた。それを彼はサイドにターンすることで相手の身体を流し、距離ができればジャブ、相手が止まれば連打を放った。
 まるでビデオを再生しているかのように同じラウンドが続き、いつの間にやら最終回のゴングが鳴り、判定でマリナジの勝利となった。観客は彼に対しブーイングをした、エキサイトするラウンドが一度もなかったからだ。相手のメキシカンの顔を見ると、あれだけ打たれたのにも関わらず、ジャブを受けた右目が少し腫れているだけであった。
 この頃からマリナジのスタイルは既にある程度完成されているもののようだった。
彼は試合後のインタビュー、ブーイングと歓声の混じる中、言った、
「今日は少し強引な相手だったが、全てのラウンドで俺が勝っていたはずだ、、、今俺に必要なのはチャンスなんだよ。」
 そのインタビューに答えているマリナジの姿を見て、そのジャブだけで彼の言うチャンスさえ訪れるのだろうか、などとあの時は考えていた。
 私にはこの日、彼の試合に物足りなさを感じ、また皆と同様に彼のスタイルに対し疑問を持つようになっていた。
 そして今、こうして自らがマリナジに問いかけることで、あの日の記憶が再び思い出されたようだ。
 今回はあの日とは違い、自分が痛みを感じてしまう程、彼の戦う姿を見つめられた
という思いと、いまだ彼のスタイルに疑問を抱き続けていた、ということを、、、

 最後、インタビューの中で彼に聞いた、今の、このままのスタイルで、この先も続けるのか?と、
 「俺は今の自分のスタイルを変える気はないよ、俺のボクシングがあの日負けたとも思ってない。ただ、世界王者になるためには何かを加える必要はある、ということは分かっている。」
 それは何だろう?
 「それは新しい武器だよ。そう、、、」

 その答えはまだ彼の中でも出ていないようだった。

ーーー終わり。


文:中屋一生 mail
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