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諸国漫遊記
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 MSGシアターで今年の3月10日、ヘビー級の十回戦がスルタン・イブラジモフとジェイバー・モーラの間で行われた。
 本来ならばこの日、NY、ブルックリン出身のWBOヘビー級王者、シャーノン・ブリッグスのタイトルに、WBO#1コンテンダーであるイブラジモフが挑戦するはずであったのだが、ブリッグスが肺炎を患い延期となってしまった。
 主役を失ったシアターでは興行自体が中止になるかとも思われたが、主催のウォリアーズ・プロモーションはイブラジモフの相手をモーラに変更し、引き続き開催することを発表した。
 そんなおおよそシアターであるとはいえ世界随一名の知れたアリーナ、MSGでのボクシングの試合にしては随分とインパクトに欠けるメインカードとなってしまった。

 それでも当日はイブラジモフを応援するロシアンコミュニティーの力もあり約2,500人が試合を観戦した。しかし果たしてどれほどの観客がこの日の興行を楽しんだのだろう。
 ダラダラとした試合進行の中、ようやくメインイベントが開始された時、すでに時計の針は11時30分近くを指していた。


 この夜、ブリッグスの欠場でテレビのライブ中継はなくなってしまったこともあり、興行全体の流れは非常に間延びしたものになってしまった。ラスベガスや他の州の興行はどうであるか定かではないが、私が訪れてきたここNYでの興行ではライブ中継のない試合になると決まってオーガナイズされていない一夜を毎晩過ごすことになるのだ。
 試合間のインターバルでは30分、1時間、何ら説明の放送もなしに観客を待たせることはざらである。1時間以上誰もリングに上がらなかったにもかかわらず、スウィングバウト(予備カード)をメインの後に行ったこともあった。これでは試合ができるかも分からず待ち続ける選手達があまりにも悲惨である。

 友人の訪れた興行ではなんと第一試合が行われている時点で、まだメインの試合に出場する選手が飛行中だったこともある。しかもその日のメインは12時を回る頃に選手の到着と同時に始められたのだ。ちなみにその選手は6ラウンドにTKO負けをした。これでは機内食、狭い座席、移動の疲労などあらゆることに耐えリングに上がったその選手があまりにも悲惨である。
 NYシティ内の試合であれば地下鉄は24時間の営業の為、終電の時間を心配する必要がなく、タクシーも常に走り回っている。試合後に観客の交通手段があることも興行の遅効を助長させているだろう。しかし何よりの問題はやはり主催者側の時間配慮の欠如と観客達がそれに慣れきってしまっていることではないだろうか。
 それは何もボクシング興行に限ってではない、アメリカの特にNYでの生活においてはサービスの受容する側と供給する側の間では常に同じような問題があり、つまりこれはアメリカ人達の国民性故のものなのだ。
 そう私が強く感じてしまうのは、自分が一般的日本人の感覚で考えているからであろう。おそらく日本程、配慮ある相手のサービスが一般社会に普及し、またそれに慣れきってしまっている国は韓国を除いてないのではあるまいか、私は他の国に住んでいることで日本のその部分に大きな畏怖の念を今、抱いている。


 話がそれてしまった、戻そう。3月10日の夜である。
 前座の試合ではホープに対し呼ばれた(噛ませ犬と言わないまでも、それにもはや近い)相手、という図式の試合のせいもあり多くが早いラウンドでの決着となった。
ある試合は、勝負を賭けていることが確かに伝わる試合もあったが、会場のだらけきった雰囲気にインパクトを与えるまでには至らなかった。
 そんな雰囲気をさらに高めたのがセミに登場した無敗のヘビー級ボクサー、ローマン・グリーンバーグの試合だった。
 それなりの戦績を持ったミッチェル・シムズ(18−7−1、13KO)が相手だったとはいえ、初回から、互いに見合ってはクリンチをし、しかし、ホールドをしようとも、外そうともせず、二人はレフェリーが止めに入るのを待つばかり。そのようなラウンドを9回費やし、3ラウンドあたりからはそんな二人に観客も答えるかのように激しいブーイングをリング上に浴びせた。最終10ラウンドの残り20秒程に、この試合初めてとも言える打ち合いを見せたところでゴングが鳴り、グリーンバーグの大差判定勝ちとなった。その時、私の隣に座っていたアメリカ人のカメラマンがため息をつきながら呟いた、
「もう一試合か、、、」
 私も心の中、同じことを呟いていた。


 そう、ようやくメインが始まったのが11時30分程の頃である、東京の後楽園ではあり得ない話だろう。気のせいか私にはリングにグリーンバーグ達の残像がまだぼやけて見える。彼等の残した結果により誰もがこのメインの試合の流れ(判定)を恐れていたに違いない。
 しかし、イブラジモフはなんと開始早々にプレッシャーをかけ、左フックでまずモーラをダウンさせその後の追撃でレフェリーが間に入り、僅か46秒でイブラジモフのTKO勝利となった。試合後、会場は彼の快勝でロシアン達の大歓声に包まれた。
それともあるいはようやく試合から解放されたことに対してか。
 私は、といえばまるで激しいチェンジオブペースの繰り返しで山道を走らされた後のような疲労感と、さらに長い道のりを覚悟した瞬間、突然のゴールを言い渡されたような、驚きとも、喜びとも、放心とも言いがたい複雑な気持ちになった。
 それは多分、私が早く終わってほしいという思いと、またそれ以上に予定されていることのない、勝敗を賭けた真剣勝負を1ラウンドでも、多く見たかったという思いが自分の中にあったからなのだろう。
 それにしてもあと僅かでも構わないので秩序ある試合運行を行ってもらえないものか、という思いもあるが、私はどこかで全てが予定通り進んでいくこともまた疲れることなのだろうなと、日本の社会を思い出しながら感じてもいた。


——終わり
文:中屋一生 mail
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